2017年11月21日

福島第一原発事故による避難者の医療に係わる協力依頼(ブログ その90)

民間事故調委員長だった北澤宏一先生からメールが入ったのは、6月25日のことです。

坂東先生

昨日、宇治の京都文教大学で行われたサイエンスeネットの講演会にまいりました。
聞きに来られた方の中に南相馬から避難中のお母様がおられて、お子様の被爆についてどこかに測定あるいは相談できるところがないだろうかという質問を頂きました。坂東先生にお伺いすると京都大阪地域で適当な相談できる人がいはしないかと思い、先生にご質問させていただく次第です。
ご存じでしたら是非お教え下さい。

北澤宏一

このお母様は、6月24日(日)に京都文教大学で行われた北澤宏一講演会「原発事故と未来のエネルギーの選択を考える 事故独立検証委員会委員長が語る真実とは?!」に出席され、現在京都に避難中でお子様らが検診を受けたことがなく、どこかで放射線計測を含む検診を受けることはできないだろうか、というご相談を北澤先生にされたのでした。当局の誤った指示で、南相馬からわざわざ風下にあたるホットスポットの方向に避難させられ、その後、京都に避難してこられた方です。

当NPOは3月11日以後、低線量放射線の検討会を集中的に行い、またHPを通じて情報発信を行ってきました。その中で、当NPOの宇野賀津子理事(ルイパスツール主任研究員)は学術会議のプロジェクトに参加し、福島のたくさんの方々とのネットワークを広げ、農協、日赤などと連携して、福島の線量調査とその後の生活の仕方などについて支援活動を続けています。そして、地域の人たちとの対話を進めるためにはお母さん達が参加しやすい環境を作る必要があると、女性議員や役所の職員との連携を深めながら、子供の保育も含めたきめ細かい配慮と工夫を重ねています。また、当検討会に熱心に参加されている会員の真鍋勇一郎氏(大阪大学工学部助教)も、現在、学術会議のプロジェクトに参加し、線量調査、特に食料の検査にかかわっています。
こうして宇野さんを中心に、北澤先生からのご相談について話し合いをすることになりました。

7月2日には、そのお母様である伊藤早苗さんと、京都文教大学東日本復興支援プロジェクトの杉本星子先生がお見えになり、いろいろな思いを聞かせていただきました。伊藤さんは積極的な方で、すでに周りの避難者とのネットワークを広げ、支援のための活動も行っておられます。すでに、東日本大震災避難者を支える市民団体「をむすび会」が、避難者の支援をなさっているとのこと、この輪をさらに広げながら、行政への働きかけが今必要なことを感じておられました。

私どもからも、知っている情報や知識をお伝えしました。伊藤さんは「こんな話を聞いたのは初めて」とおっしゃり、すぐに行動に移されました。こういう方がおられると道は開けてくるものです。宇野さんも福島とも連絡を取り、健康相談のできるところも積極的に交渉を開始しました。そして7月18日に再び相談の会を持ったのです。

このように福島との連携を取りながら、私たちにできることを進めることとなりました。その第1弾として、「福島第一原発事故による避難者の医療に係わる協力依頼」を、当理事会の議を経て、当法人の名前で7月24日に宇治市災害対策本部に提出しました。宇治市災害対策本部の本部長は、京都府災害対策本部の本部長へこれを直接届けていただけるとのことです。
そこには、避難者の健康状態の把握、内部被ばく検査、甲状腺検査、国民一般健康診断、各種がん検診、人間ドック、脳ドック等々の医療に係わる支援、ならびに避難者の医療ニーズに関するアンケート調査への協力・支援のお願いを書いています。これらの支援が今まで十分になされていなかったのは大変遺憾なことであり、避難者はますます置き去りにされることは許されることではありません。

伊藤早苗さんは現在のお気持ちを次のように語られています(一部紹介)。

科学者の方々も福島の原発についてはご苦労が多いと思っています。いろんな情報が飛び交い、真実の無い真実を求められて苦心しているのも避難者達も分かっています。私達も出来ることからこつこつ分かりあって芯から安心に近づけて行こうとしています。落ち着いた気持ちで落ち着いた判断をしなければいけませんね!!いままでは、「大変だ!!とにかく大変だ!!何がどう大変か分かんないけど大変な事が起こった」と一目散に逃げました。半年が過ぎ「放射能の影響有るの?無いの?あったらどうなるの?」の疑問ばかりで不安でした。一年が経ち「健康検査しないの?出来ない?機械が無い?子供は大丈夫?検査してほしい」とすがる気持ちが湧いてきました。そして、今、「何故、遠方避難者は検査連絡無いの?見捨てられてる!!」そんな声が出ています。

一年がんばって生計立て直そうと思ってきました、でも見捨てられた感じが広がり喪失感に発展しないようにしていこうと、みんな踏ん張っています。
坂東さんや宇野さんの話が聞けなかったらきっと今でも固い鱗を取る事が出来ずに意固地のままでした。気持ちを一度リセットして、改めて聞き直す、落ち着いて考える、自分自身を第三者的な目で見てみる、要するに”冷静に知る”が必要ですね!!

今回の坂東さん宇野先生のご協力をみんなに話しました。希望をもって諦めずに頑張ろうと改めて感じさせていただいております。避難者みんなに心から伝わる様にわたしも発信していきたいと思いました。

伊藤早苗

現在、福島を訪問中の宇野さんがメールを寄せられました。

伊藤さん、坂東さん

県庁の担当の方と話しました。伊藤さん等の希望は伝えました。当方で、アンケートを取り、皆様のニーズを把握するのは、県の方に対策をお願いするにしても、役に立つ資料になるでしょうとのことでした。京都府災害対策本部に協力を求める方が、アンケートなどやりやすいのではとのことでした。8月7日のプレシンポまでに、福島県の避難者支援課や地域医療課などの状況も調べておくとの事でした。取り急ぎ報告まで。

宇野賀津子

担当の方は、当あいんしゅたいん主催のプレシンポジウム:中西基金「原子力・生物学と物理」プレ・コンファレンス ~私たちに何ができるか~に出席願い、直接福島の様子を話してくださることになっています。

なお、私たちは毎年、京都大学理学部と共催で親子理科実験教室をシリーズで開催していますが、それに加えて今年は9月に「放射線をはかってみよう」という大人の理科教室を計画しており、避難しておられる方々に正確な情報を伝える役割も果たせるだろうと考えています。この大人の理科教室は、宇野さんを中心にして、放射線の単位の解説を手掛けている京都大学の学生(2年生)が主体になって企画を進めているところです。私たちは一方で、「放射線が危険だ」と主張されている科学コミュニケータの方とも、またNHKの非科学的な放射線防護の報道に「もっと科学的事実を!」と反論を展開されている方とも交流し、いろいろな立場を超えて放射線影響についての検討を重ねています。医者あり、生物屋さんあり、物理屋さんありです。ただし、政治的思い込みだけが先に立ち、真実を知ろうとしない方々にはお役にたてないかもしれません。

低線量放射線検討会セミナーには、当NPOが主催したシンポジウムに参加され熱心に勉強を始められたお母さんも何人か参加されていますし、最近では逆に、みなさんからの情報でどんどんネットワークが広がっています。そして、作業班を作って、いろいろと調べたりデータを整理したりしています。宇野さんの活動は、福島でも、日ごとに広がりを見せています。

7月23日の朝日新聞には、「原発母子避難 重い負担」という見出しで、新聞社の調査結果が大きく報じられています。やっと、こういう方々にも目を向けられ始めたところともいえるでしょう。
皆様のご理解とご協力を切にお願いいたします。

なお、これと同時に、原発事故による避難者(京都在住)に対するアンケートを行っています。該当者がおられましたらご連絡ください。

NPO法人 あいんしゅたいん 坂東昌子(理事長) 宇野賀津子(常務理事) 艸場よしみ(会員)