2017年10月24日

東日本大震災 ー 放射線リスク評価関連リンク編

現在の状況は、再臨界など、最も危惧されていた事故からは脱したものの、まだまだ予断を許さず、しかも長期化することは確実です(これは、当初から予測されたことではありますが)。福島周辺のみならず、被ばく量がどの程度だったら、どうするべきかという指針も必要です。
ブログ48で紹介したシーベルト換算表について、いろいろな意見を頂きました。そのネットワークの中で、紹介すべき意見と、参考資料をお送りします。

放射能漏れに対する個人対策

スウェーデン国立スペース物理研究所(IRF)山内正敏さんが作った「どこまで放射線レベルが上がったら行動を起こすべきか(赤信号と黄信号)」という問題意識で、「放射能と風向きの観測値に基づく行動指針を概算してみました」という解説をみつけました。
原子力安全委員会のシミュレーションの大きな誤差についても触れています。

● 論文「低線量の健康影響 ー低線量放射線の生物影響と細胞応答ー
  米井修治(京都大学理学部名誉教授)ほか〔日本放射線技術学会雑誌 第58巻 第10号(2001年11月8日第29回秋季学術大会)〕

定量放射線の影響については、放射線中―高線量と低線量とでは性格が違います。この解説は少し専門的になりますが、とてもわかりやすいです。特に物理系の方々にはデータに基づいて説明してあるので、読みやすいです。
(ただし、高橋真理子さん200ミリシーベルト被ばくの場合のがん発生のリスク(5%増加)と比べると、もっと少ないという結果が出ています(0.05%増加)。参考にされた論文が違うようです。)

● 朝日新聞記者解説「放射線防護の基本的な考え方とは
  高橋真理子(科学医療グループ記者)

リスクの計算は米井氏の論文と少し違いますが、参考になります。
これらのリスクの計算には模型による違いや、男女・年齢等による違いなど、それほど確固としたものではありません。さらに言えば、低線量の場合の評価について、少ない線量で長期間の場合と短期間に同じ線量を浴びた場合では、修復機能の働き方も違います。
高橋さんが参考にされたのは、以下の論文です。

「Latest Knowledge on Radiological Effects:Radiation Health Effects of Atomic Bomb Explosions and Nuclear Power Plant Accidents」
By Shigenobu Nagataki(Chairman, InternationalAssociation of Radiopathology (IAR) Past Chairman, Radiation Effects esearch Foundation (RERF) Professor Emeritus, Nagasaki University),Jpn. J. Health Phys., 45 (4), 370 —378 (2010)

● フランス研究機関”CRIIRAD”による、食品の放射線汚染に関するコメント

野菜や牛乳のベクレル値について、日本側の報道がunderestimateしていることが、日本語で書かれている文章には書かれています。立場によって、かなり厳しくとる場合もあります。

● 「原発緊急情報(10) 政府・マスコミ、ごまかし。危ない?!

武田邦彦先生が、マスコミ報道の「シーベルト」についての説明の批判を含め、当面どうすべきかわかり易い形でという情報発信をしています。


<注意:間違い訂正>

ブログ48で坂東が触れた甲状腺ホルモンは成長ホルモンとは違うということです。ヨウ素は甲状腺ホルモン(チロキシン)の原料で、甲状腺ホルモンは代謝を調節するホルモンです。ただ、甲状腺ホルモンと成長ホルモンは、全く別の種類のホルモンですが、どちらも、子どもの成長には欠かせないホルモンです。はっきりしていることは、ヨウ素は、乳児や幼児の成長に欠かせないので、放射性ヨウ素が乳児や幼児に取り込まれやすいことです。比較は簡単にはできませんが(佐藤文隆名誉会長のブログもお読み下さい)、チェルノブイリ事故の場合も、どこまで放射線による障害といえるかは、国際的に合意を得ているのは、当時乳児・幼児だった子供たちの甲状腺がんのデータだけだそうです。

小児・思春期甲状腺ガンの発症率
因果関係が公式に認められているのは甲状腺ガンだけですが、チェルノブイ
リ原発事故後、白血病やその他の病気が増えたという報告も数多くあります。


<より専門的な資料 被曝線量の計算に関する資料>

ベクレルから被曝線量(シーベルト)の計算にはいろいろな要素があるので、簡単に換算できないそうです。ブログで掲載したのは標準的な計算に過ぎず、正確な値はいろいろな条件で異なることをご承知ください。
線量係数は一義的ではありません。人体内の動態などの他にも、ヨウ素がどのような化学状態(化合物、分子状態とか)で取り込まれるか、水溶状か、粒子形状か、などでも被爆量は変わってしまいます。容易には臨床試験ができないので、なかなか科学的データが取りにくいところだそうですので、まだまだ細かい正確な数字を決めることはできない状態です。そのことをしっかり押さえていてほしいと思います。
いろいろな参考資料があります。

● 文科省のHP「環境放射能と放射線」には、けっこう詳しい説明が載っている。

福島原子力発電所の事故に伴う放射線の人体影響に関する疑問に答えます(日本放射線影響学会福島原発事故に伴うQAグループ)

注意:ブログ定量放射線の影響については、放射線中―高線量と低線量とでは性格が違います。また、同じシーベルトの総量でも、瞬間被曝と長期被ばくとは、その影響は違うのです(人間の体には修復機能もあります。)が、とりあえず目安としては、総量の大きさで判断するしかありません。

ICRP第2専門委員会の活動

ICRP 新勧告による内部被ばく線量評価

放射線影響と放射線防護(動物実験)の結果((財)高度情報科学技術研究機構)

以上、被爆の影響についての資料をご紹介しました。別途、放射線や放射性物質の解説は、パワーポイントの資料をアップするつもりです。

当法人では、佐藤名誉会長や松田副理事長にも資料を頂きながら、宇野理事と坂東理事長が責任者となって情報発信チームを立ち上げました。
メール上でいろいろ意見を交換していますが、次々とでてくる情報を、とにかく、できるだけ私たちがわかる範囲でご紹介いたしたいと思います。これから発信していく情報は、私たちの手で一応チェックしていますが、すべて確認できているわけではありません。自らの判断でお使いください。

以上は、さる3月22日、当法人で緊急に相談会に集まったメンバーを中心に、メール上で参加いただいた多くの方々の情報をもとに発信しています。以下のメ
ーリングリストからも情報を頂いております。

・NPOあいんしゅたいんメーリングリスト
・素粒子論グループメーリングリスト
・原子核研究者メーリングリスト
・女性研究者の会:京都メーリングリスト
・科学カフェ京都メーリングリスト
・東大物理学科1979年卒業生グループ
・日本物理学会京都支部長・吉川研一京都大学理学部長からの情報
・情報発信センターメンバー