2017年03月30日

科学的なデータと資料に基づいて、一人一人が放射能汚染と放射線障害から身を守りましょう(ブログ その48)

現在、放射線や放射能などの正確な理解、それに人体に与える影響など、私たち1人1人が、自らの判断を迫られています。私どもも、現在、今私たちに何ができるか、情報センターを立ち上げ、情報交換を行っています。特に、今のような時期には、正確な情報を発信しないとかえって混乱を起こすので、躊躇していたのですが、事態は予断を許しません。
福島原子力発電所の状況は、予断を許さないものの、電力回復に向けて危機的状況から多少改善の兆しを見せていますが、一昨日から、放射線、放射性物質の拡散の問題が出てきました。また、体内被曝と体外被曝のちがい、「安全」などの言葉の意味もしっかり理解しておきましょう。
そこで、私たち科学者の間での議論のなかで、信頼すべき、また主観をはさまない情報を、梶野敏貴先生(国立天文台理論研究部准教授・東京大学大学院理学系研究科天文学専攻併任准教授・総合研究大学院大学数物科学研究科併任准教授)から、「どこにでも必要なところで情報発信してください」の許可を頂き、とりあえず以下の緊急情報をお知らせします。


梶野先生から

水道水の放射能汚染(210 [ベックレル/キログラム (Bq/kg)] )に対する注意喚起、野菜採取に対する警告などが報じられています。
”科学的なデータと資料に基づいて、皆さん一人一人が放射能汚染と放射線障害から身を守る” ことが、まず大切です。

発表される放射能データから人体に影響を及ぼす放射線量を算出する方法を知っていれば、飲料水に限らず径口摂取物一般(ミルク、野菜、等々)に当てはめて放射線量を見積もることができ、今後の事態の推移に対応できます。風評被害を受けない、あるいは加担者にならないためにも、ぜひご一読し、ご活用下さい。

放射性ヨウ素131(I-131)の例で示します。

3月23日「江戸川水系・金町浄水場でヨウ素131が210 [ベックレル/キログラム (Bq/kg)] が検出された。」と報じられました。
この数値から一年間の放射線量を見積もってみます。IAEA の評価済み資料(放射線医学総合研究所HP、末尾に示してあります。)によると、

一年間の放射線量 =W [ミリシーベルト (mSv)]
検出された放射性核種 I-131 の濃度 = C  [キロベックレル/キログラム (kBq/kg)]
一日の水の摂取量 = U  [キログラム/日 (kg/d) または リットル/日 (L/d)]
摂取日数 = D [日 (d)]
換算係数 = CF [ミリシーベルト/キロベックレル (mSv/kBq)]

W = C×U×D×CF   [ミリシーベルト (mSV)] ----------- (換算式)で計算できます。上の例で、実際に数値を入れてみましょう。

C=210/1000      ([Bq/kg] から [kBq/kg] に単位を変えます。)
U=1          (成人は一日に約1リットルの水を飲むでしょう。)
D=365         (一年の日数。)
CF=2.2×10-2=2.2/100  (放射線医学総合研究所HP-資料-A(末尾参照) p.116 から)
          資料-Aでは   CF=2.2E-02と標記されています。
          E-02=10-2=1/100
      注:10n=10をn回乗じた数、10-n=1/(10をn回乗じた数)

             W=210/1000 ×1 ×365 ×2.2/100=1.7  [ミリシーベルト (mSv)]

皆さんご存知のように、私たちが(一年間に浴びている)自然放射線の日本平均は年間1.5ミリシーベルト [mSv]、世界平均は年間 2.4ミリシーベルト [mSv]です。詳しくは、放射線医学総合研究所HP-資料B(末尾参照)の中で判りやすい図に示してありますからご覧になって下さい。これによると、

「年間線量100ミリシーベルト [mSv] まで、がんの過剰発生が認められない。」

とのことですから、成人ならばこの例のような放射能を持つ水(時間とともに一定で変化しないと仮定しています。)を毎日1リットルの割合で一年間飲み続けても心配はないという解釈になります。ただし、ミルクしか飲まない乳幼児やお子さんは注意するに越したことはありません。成長過程でヨウ素が甲状腺に集積しやすいため、化学的な性質が同じ放射性ヨウ素131が安定で無害なヨウ素127と一緒に取り込まれると、甲状腺がんになる確率が高くなると言われているからです。甲状腺から出る成長ホルモンには、ヨウ素が必要なので取り込むのです。大人は、成長ホルモンは殆どでませんので、入ってきたヨウ素はそのまま体外に排出されます。

以上の算定は、3月23日に金町浄水場で検出された「ヨウ素131が210 [ベックレル/キログラム (Bq/kg)]含まれる水道水」をずっと一年間毎日1リットルずつ飲み続けた場合の推定量ですから、以下の点に注意する必要があります。

1.水道水に含まれる放射能は時々刻々変化します。水の摂取量も日ごとに、人によってまちまちです。

換算式で、検出された
 放射性核種 I-131 の濃度 = C
 と、
 一日の水の摂取量 = U
は日ごとの平均値に置き直す必要があります。
放射性元素には半減期があり、新たな供給がないとすれば時間とともに減り続けます。ヨウ素131は8日間で半分になりますが、この計算では変わらないとしています。

2.放射性ヨウ素131を含む野菜、他の経口摂取物も加算する。

換算式で、一日の摂取量 = U と摂取日数 = D が食べ物ごとに異なります。

3.放射性セシウム137、他の放射性元素による線量も加算する。

換算式で、換算係数 = CF が違います。
当面、気になる放射性元素に対する CF の値を以下に示します(放射線医学総合研究所HP-資料B, p.116-117 から抜粋)。

放射性核種 換算係数 CF [mSv/kBq]
ヨウ素131(I-131) 2.2E-02
セシウム137(Cs-137) 1.3E-02
ウラン235(U-235) 4.6E-02
ウラン238(U-238) 4.4E-02
プルトニウム239(Pu-239)  2.5E-01

参考になるホームページ

● 放射線医学総合研究所HP:http://www.nirs.go.jp/index.shtml
● 放射線緊急事態時の評価および対応のための一般的手順:http://www.nirs.go.jp/hibaku/kenkyu/te_1162_jp.pdf
● 東北地方太平洋沖地震に伴い発生した原子力発電所被害に関する放射能分野の基礎知識:http://www.nirs.go.jp/information/info.php?i3