2017年10月18日

2015年の新年のご挨拶!(ブログ その115)

2015年になりました。

実はバタバタしていて、年賀状の印刷も1月3日の夜遅くからになってしまいました。この年齢になると、「来年からは失礼します」と書いた年賀が届くようになります。みんながどんな研究をしているか、ポスドクだった人のその後元気にやっているか、愛知大学のゼミ生たちはどうしているかなど、1年に1回のお便りで皆さんがどんなに頑張っているか知ることができて、年賀でちょっと幸せになります。
でも、今や世はインターネットの時代、来年からは、このHPで私の思いを語り、メールでやり取りで皆さんのご様子を知るので十分かもしれないと、今思ったりしています。

ところで、今年から当事務所(ホワイトハウスと呼んでいるところですが)に、定期的に(もちろん出張などがある時は別ですが)以下のお二人が来て下さることになりました。

毎週火曜日⇒佐藤文隆名誉会長
毎週木曜日⇒松田卓也副理事長

議論したい方は、いつでもホワイトハウスにおいでください。

さて、今年は色々な意味で、記念すべき年になりそうです。
第1は、今年10年ぶりにパグウォッシュ会議が日本で開かれます。ちょうど、2005年広島で開かれて10年目です。ラッセル・アインシュタイン宣言で始まった科学者の核兵器廃絶のための営みはずっと続いていて、今年は第61回目です。写真にあるようなパンフレットとバッジができています。このバッジをつけて、ちょうど「赤い羽根」のようにたくさんの方々に、少しずつご協力願って(1人200円程度のカンパをお願いしています)沢山の力で成功させたいと願っています。当NPOにも、おいてありますので、気軽お御声掛けくださり、胸につけていただけるとうれしいです。
今年のパグウォッシュは、特別の意味を持っていると私は思っています。それは、2011年3月11日以後、原水爆実験のみならず原子力発電所の事故による放射線の影響について、科学者の間に極端な意見の差があり、いったい放射線のリスクについて、何を信じればいいのかわからない状況が続いているからです。私たちは、どちらの意見もできるだけ公平に判断できるよう、みんなで勉強してきました。そしてその結果を情報発信してきました。 
しかし、世の中では、あふれる情報の前にどこまで真実かわからず、はては「科学者不信」「科学不信」が広がっています。そして情報発信すると、放射線の話まで「原発推進」か「反原発」か、という2つのどちらかのレッテルを張られ、良心的な科学者のほとんどが、口をつぐんでしまっている状況です。原発の問題は価値観が入っていますが、低線量放射線の影響は、科学でどこまでわかっているか、どこがおかしいのか、価値観や政治的判断に左右されず、明確にすべきなのです。このような情勢の中で開かれる「科学者」の集まりが、偏見にとらわれず、しっかり真実を見極めながら、科学的な基盤の上に協力協働して取り組むネットワークを形成できたらいいですね。パグウォッシュが、核兵器を廃絶するためには、一致して意見が自由にいえる機会にしたいですね。福島第1原発事故から、間もなく事故から4年を迎える今、日本で行われるパグウォッシュ会議が実りあるものになるようにと願っています。

第2に、あいんしゅたいんに関係した方々が最近出した本のことです。
特に艸場よしみさんが編集された本「安倍首相から日本を取り戻せ」はカルチャーショックを与えてくれました。
松田卓也さんの「間違いだらけの物理学」には、私も登場するのですが、ちょっと文句があります。私は不思議なことがあったとき、自分で答えを見つけられないとき「なんでかな」とはいうけど「しらない」とは言わないのに、この本にでてくるんです。「これ嘘やで」と言っています。しかし、この本も面白いです。松田さんのキャラクター躍如たるものがあります。
それから、佐藤さんの「科学にすがるな」という逆説的な本は艸場さんがまとめているのですが、皮肉たっぷりに見方が面白いです。
もう一つ最近、澤田哲生さんはわがNPOの会員ですが、湯川資料をかなり調べて、「正力大臣車中談(案)と湯川秀樹原子力ムラと御用学者のルーツ」や原子力黎明期における国産原子炉開発と湯川秀樹らの関与」などは、とても考えさせられる内容で、そのうち本にしてほしいです(日本原子力学会誌に載っています)。別に澤田さんは、「誰も書かなかった福島原発の真実」は本になっていますが、いろいろ出ている事故調より面白いです。今、トリウム原子炉のことを調べていますが、この本の中で、核物質の性質には「フィッサイル」と「ファータイル」と「フィッショナブル」という概念の違いを理解すべきというのはなるほどと思ったが、いまだに後者2つの区別がようわからんので、今度澤田さんに会って聞いてみようと思っています。
私は暮れの京都科学カフェで、「湯川博士と原子力」というタイトルで講演をしましたが、3・11以後考えさせられたことを話しました。湯川研の出身で素粒子論グループの中で、核兵器廃絶にはずっと身近な問題として考えてきたわけですが、ビキニ以後は「核実験反対」という1つの焦点になってきました。しかし、近頃、原子力との関係は、放射線の「これでよかったのか」という疑問を持ち、いろいろと調べているところです。ですので、澤田さんの研究とも重なって、日本の物理学者、というか世界の科学者が、新しく発見した原子力エネルギーの使い道が、戦争の道具として使われた苦悩とその生き方を振り返って教訓にしたいと考えているところです。これらの本の話はそのうち、1つずつブログに書くこととします。

考えてみると、一昨年のお正月は、1月1日から艸場さんや影山さんと「放射線データ集―人体への影響を正しく理解するために―」の構想についての打ち合わせをしました。正しく知ることが生きる力につながる、そんな思いのこもった高関心層向けの本の企画が動き出したのでした。
あれから1年、かなり完成に近づいてきました。艸場さんと土田さんが、1つずつ上がってくる原稿を見て、わかりにくいところや間違っているところを丁寧に指摘して、またフィードバックするという回りくどいやり方で、進んできました。途中で専門家の意見を聞いたり、みんなで議論したりして、「データを見てどこまでいえるか科学的に考える」ための本で、きっと皆さんにお役にたつと思います。
今世の中で、「いくら少なくてもリスクがある」とする意見と「年間100mSvぐらいは自然から受ける刺激に対してほとんど影響がない」という意見とが飛びかい、みんな何を信じていいのかわからない状況が続いている中で、「どこまでわかっているのか、データを見て判断できる素材をまとめよう」と、3・11以来、「低線量放射線検討会」で勉強してきた仲間の艸場さんが編集長となって始めた作業です。
そういうわけで、艸場さんがワインとおせち料理を引っ提げてやってきて構想を練りました。今年はいよいよこのデータ集が完成します。長い道のりでしたが、それだけ、わかりやすく、しっかりしたデータ集として活用いただけるのではと思っています。頑張りましょう!

そのほか、親子理科実験教室の若手主導型のt理組を通じて京大理学部を中心にして沢山の若者が集って議論できるようになり、また、4日には、松林・高見両先生と集まり、KAGAC(E-learning方式による教員免許状更新)の教材を作って、昨年はこれが授業の1つとなりました。あいんしゅたいんは、「お母さんと語る環境問題」「子供と考える資源エネルギー」「風景の物理」を開講していますが、また1つ「電磁気お役立ちメニュー」が増えました。

この「ホワイトハウス」に移るときは、どこに次の居場所を求めるかずいぶん迷いましたが、京都大学のすぐ近くに決めたのは、よかったと思っています。
若い方々が、よく出入りしてくださるようになり、女性研究者の定期的にお昼ご飯を共にしたりと、とても賑やかです。まだまだ思いはたくさんありますが、今年もたくさん議論できることを楽しみにしています。

2015年1月(遅まきながらの新年のごあいさつです)